底辺司法試験浪人生の泥沼脱出記

司法試験受験という泥沼に陥りもがきながらも平成28年度合格を目指す人間の生き様を記したブログ。幾多もの失敗経験から学んだこと、考えついたことを書いていきます。司法試験受験生や他の難関試験受験生等にとって少しでも参考になれば幸いです。

放火罪の「焼損」の意義をどう書くか

 放火罪は論文での出題の可能性は低めですが、短答ではよく出ますし、どう書くか人によって割れやすい「焼損」の意義について、私がどう書くか簡単に整理しておきます。

 

・学説

 独立燃焼説(判例):火が媒体物から離れて目的物に燃え移り、目的物が独立に燃焼を継続する状態に達したこと。放火罪は公共危険罪なので、延焼の危険性が高まる目的物の独立燃焼時を基準として、既遂時期を考えるべきとの考えからきている。

 燃え上がり説:主要部分が燃焼したこと

 一部損壊説:目的物が毀棄罪の損壊の程度に達したこと

 効用喪失説:目的物の燃焼により本来の効用を喪失したこと

→どの説も優秀な先生が考えていることもあって、それなりに根拠がありますが、論文で書くなら独立燃焼説が無難で書きやすいでしょう。

 燃え上がり説は主要部分がどこかが不明確で判断が困難、一部損壊説と効用喪失説は目的物の財産性を重視しすぎていて公共危険が生じるかとの観点から離れているという問題があります。

 

・不燃物建造物の場合

 独立燃焼説:燃えないので既遂にはならない。

 効用喪失説:燃えなくても、火力により建造物の効用が失われれば既遂。

 毀棄罪修正説:焼損するのと同様の公共の危険を生じさせる場合は既遂。

→シンプルな結論になるため、書きやすいのは圧倒的に独立燃焼説。

 「焼損」の国語的意味からして、目的物が燃えていないのに「焼損」というのは難しいでしょう。

 

 ちゃんと論拠を書いてうまく説明できればどの説をとってもよいわけですが、書きやすさのことを考えると独立燃焼説が一番無難かなと思っています。他の説だと判例が採っている独立燃焼説を批判しないといけませんし(時間と手間がかかる)、公共危険罪を毀棄罪のように効用が失われたか否かの観点からとらえるのはなぜかを説明するのは難しいと思います。

 放火罪は去年のLECのセミファイナルだったかでも出てきましたが、そこで無理して効用喪失説で書いたら全く点にならなかった苦い記憶が蘇る…

 

 あと、放火罪といえば、建造物の一体性(物理的一体性、機能的一体性)、公共の危険の認識の要否の論点ぐらいはしっかり書けるようにしておきたいところですね。ここら辺の論証ぐらいはしっかり吐き出せるようにならないと。いちいち基本的な論証で思い出すのに時間をかけていたら30点台どころか30点を取ってしまう。