底辺司法試験浪人生の泥沼脱出記

司法試験受験という泥沼に陥りもがきながらも平成28年度合格を目指す人間の生き様を記したブログ。幾多もの失敗経験から学んだこと、考えついたことを書いていきます。司法試験受験生や他の難関試験受験生等にとって少しでも参考になれば幸いです。

H24民法で書くべきこと

 先日、同士と素晴らしい先生と開いたゼミで平成24年司法試験民法の問題を取り扱ったので、大事なことを忘れないために簡単なメモを残しておきます。今後もゼミで扱ったことは取り上げていくつもり。

 詳しい解説は辰巳とかの予備校を参考とすべきですし、受験生にどれだけ有益なメモとなるかは不明なので、受験生の方は過度の期待は抱かないでください!

 

第1 設問1(1)

 売買契約による所有権の主張が認められるかという問題。2分の1についてはEに持ち分があり、Fは甲土地2分の1の持ち分の範囲でしか所有権を主張できないのではないかが問題となる。

1.問題点の指摘 

 Fは、①Bの甲土地もと所有、②AB間の売買契約締結、③A死亡、④FはAの子であることを主張して、AB売買と相続により、甲土地の所有権が自己に帰属することを確認する請求をすることが考えられる。

 ②~④は争いなし。①については甲土地がC死亡に伴いDE間で共有となるため、Dは2分の1しか持ち分を有しておらず、BはそのDから持ち分2分の1を相続により承継したのであるから、持ち分2分の1の範囲でしか①が認められないのではないか。

2.Eの持ち分2分の1について

 Fは持ち分2分の1については甲土地の所有権を取得するが、Eの持ち分であるはずの部分についてまで所有権を取得するか。

 Dの子Bは、Eに無断で甲土地全部を売却しており、2分の1については他人物売買(560条)に当たり、Eから持ち分2分の1を取得してAに移転しなければならない。しかし、Bは遺産分割協議(909条)や共有物分割(256条)等の手続きをしておらず、Eから持ち分を取得できていないため、Aには甲土地の2分の1しか所有権が移転できていない。

 Fは、甲土地のうちDが有していた持ち分2分の1についてのみ所有権が認められる。

3.Fが甲土地全部について登記を得た場合

 Fが、Eの持ち分2分の1についても登記を得れば、Eに対して所有権を取得したと対抗できないか。

 Fは無権利である以上、Eは登記なしに所有権を対抗できるため、Fが登記を得たとしても、甲土地のうちDが有していた持ち分2分の1についてのみしか所有権は認められない。

※時間の都合上、3は短めに書くべきではないかと思われる。触れなくても大して痛手ではないかも。

 

第2 設問1(2)

 売買契約締結事実が、長期取得時効を主張する場合にどのような法律上の意義を有するかの問題。どの要件が問題となるか、暫定真実等の規定との関係はどうなるかなどを書くべき。

1.要件

 長期取得時効(162条1項)が成立するには、①自己所有の意思があること、②平穏かつ公然と占有がされたこと、③20年間占有されたこと、④他人の物が占有されたこと、⑤時効を援用したこと(145条)が必要となる。

2.所有の意思との関係

 所有の意思は外形的客観的に定められるが、売買契約において買主になるということは、客観的に見て所有の意思があるとみるのが通常である。

 したがって、186条1項の推定を覆す抗弁に対する積極否認として法律上の意義を有する。

3.他人の物との関係

 162条1項の文言が他人の物になっているのは通常自己の物を時効取得することは考えにくいからにすぎないので、時効制度の趣旨である物の占有継続という事実状態を権利関係に高めること及び立証の困難性の救済は自己の物にも当てはまるため、自己の物であっても時効取得が可能である。

 自己の物でも時効取得が可能である以上、他人の物との要件との関係では法律上の意義を有しない。

 

第3 設問2

 複数人が寄託した物を混合保管していたところ、保管物の一部が滅失したというケース。物の全部の返還請求が認められるかという問題。契約の合理的解釈から合理的な結論を導き出さないといけない。

1.請求の根拠

 契約書6条に基づく全部返還請求。6条は、同一数量を返還するとの規定であるため、全部請求が認められるとも考えられる。

2.半分の返還しか認められない論拠

 混合保管の趣旨(契約書4条)より、個々の所有権は失われ、寄託者は、寄託物全体について割合に応じた共有持分権を取得する。6条は共有持分割合に応じた数量の返還を認めたものと解すべきである。

 寄託者の公平の観点より、Fが有する2分の1の持ち分を一方的に奪ってしまうべきではないし、滅失があった場合に6条がそのまま適用されて先に返還請求した者が優先的に返還が受けられると解すべきでない。

 Gは2分の1しか返還を受けられないとしても、残りについては金銭賠償を求めることができるし、酷な結論とならない。

 寄託数の割合に応じた返還しか認められないと解すべき。

※正直かなり難しい問題。いまだにどういう論拠を提示するのが説得的かわからない。設問1と3は確実に稼ぎやすい問題なので、そちらの完成度を高めるべき。

 

第4 設問3

1.債務不履行の成否

 債務不履行(415条)が成立するには、①債務者が本旨に従った履行をしないこと、②損害発生、③帰責事由、④因果関係が必要である。

 無償の寄託に合意し引き渡しがあるため、Hは寄託物について自己の物と同一の注意義務を負う。

 しかし、Hは、鍵をかけ忘れるという自己物を保管する場合であってもありえないほどの重大な注意義務違反をしており、無償寄託に基づく保管義務という寄託上の債務を怠ったといえる(①を満たす)。

 Hの重大な注意義務違反(③を満たす)により、盗難が発生し下線部の事態が生じたといえる(④を満たす)。

 したがって、損害があるといえれば、Hは債務不履行責任を負う。

2.賠償の範囲について

 債務不履行による損害賠償の損害に含まれるのは、通常損害(416条1項)と当事者にとって予測可能な特別事情に基づく損害(416条2項)である。

 損害が生じると分かっていたのにあえて債務不履行をした以上、生じた損害を賠償させるのも酷ではないという考えで2項が規定されたことからすると、債務者が債務不履行時に損害発生が予測可能であれば、債務者は賠償責任を負う。

 本件では、Q百貨店全店舗での取り扱いが今すぐには認められないことになってしまうことは予見できても、交渉打ち切りという強固な手段をQ百貨店がとり将来にわたって取り扱いが認められなくなることまでは予見できなかった。

 したがって、損害賠償請求は認められない。

 

 

 設問2は難しいですし、この手のじっくり現場で考えさせる問題を本番の限られた時間内でうまく書くのは至難の業ですね。

 比較的点数が取りやすそうな設問1、3で確実に点をとり、設問2でいかに食らいつくかが大事だったと思います。

 去年も解いた問題ですが、答案の出来は結構上がっていると実感(まだまだ全然物足りないけども)。過去問を何度も問題を解くよりは、初見で予備校の問題を解くほうが良いかもしれませんが(時間配分をしっかりする練習になる、時間内にしっかり書ききる練習になるため)、たまには過去問に再び当たるのもよいでしょう。