「司法試験は暗記じゃない」とはいうけども
司法試験の勉強をしたことがある方であれば、よく「司法試験は暗記じゃない」というような発言を耳にしていると思います。
「司法試験では理解こそが大事なのであって、暗記すればよいわけではない」という意味では全くその通りなのですが、「司法試験では暗記が重要でない」というのは完全に誤りです!
すば抜けて記憶力の良い方であれば、「暗記なんて大事ではない」と言い切れますし、理解したことをすんなり論理的な文章として表せるだけの才能をもった方であれば、「わざわざ論証なんて覚えなくてよい」と言えますが、ほとんどの受験生はいずれにも該当しないと思われますし、理解も大事ですが、基本的な事項や基本的な論証の暗記は極めて重要です。
もし、ずば抜けた能力もないのに「暗記なんて大して重要ではない」なんてことを思っている方がいたとしたら、早く考えを改めないと大変なことになりますので、ご注意ください。
といっても、ちゃんと暗記できていないとどうなるかをはっきり書かないと、説得力がないので、基本的な事項や基本的な論証の暗記が不十分だった人間がどうなったかについて書いてみたいと思います(精神的自傷行為)。
○どの科目も時間が足りない!
基本的事項をしっかり覚えていないと、論点が何なのか、どうしてこのことが問題になるのか、どの条文か、要件は何か、根拠は何かなどがぱっと出てこないので、いちいち検討に時間がかかります。
雇止めの問題が出てすぐ、期間の制限のない雇用契約に転換していたか、期間の制限のない雇用契約を黙示に締結していたかといった論点が出てこず、どういう問題があるか・問題がいくつあるかということを悩んだら、その論点だけで2分~3分もロスが発生します。
また、条文がどこらへんかも把握していないと、条文を探すのにまた時間がかかりますし、要件を一から条文より導いて正しいか確認していたら、それだけでまた1分や2分のロスが発生しています。
こんなことをいちいち繰り返していたら、設問1つごとに5分、ひどいときには10分ぐらいロスしていまいます。
何もかもを覚えておく必要はないですが、頻出論点についてある程度のことを覚えておかないと、とにかく検討に時間がかかり、その結果途中答案になったり、思うようにしっかり書けないまま時間終了となったり、他に書けるはずだったところまで書けなくなったりするリスクが急増します。書けるはずのことを書けないというのは、ただでさえ1点2点でも多くの点数が欲しい司法試験で大きな痛手になりますし、精神的にもダメージが大きいです。
○些細なところでポロポロ失点する
時間がかかってもしっかり条文が指摘できればよいですが、会社法などでは条文が多く、結局条文がよくわからなかったり、間違えて条文を指摘してしまったりすると、取れるはずの点数が取れなくなります。
定義があいまいだったり、論拠の記述が不十分だったりすると、覚えておいてしっかり書きさえすれば点が取れる稼ぎどころですら、あまり点が取れない羽目になり、結果として全体の点数が伸びないことになりがちです。
○大幅減点につながりやすい
論点をしっかり覚えていない場合、例えば検討すべき事項が3つあったとしても、2つしか検討しないまま残り1つに気づかずに終わってしまうような危険が高まります。大幅減店となる論点落ちの危険が高まってしまうのです。
また、要件をしっかり覚えていない場合も、本来であればあてはめ部分でしっかり記述をして点数を稼げるはずだったのに、稼げるはずの部分の点数が0点になってしまうおそれがあります。
どういう論点があり、どういう要件があるかということをはっきり覚えていないと、絶対に避けたい論点落ち等の大幅減点の危険が高まってしまうのです。
司法試験においては理解が非常に大事なので、暗記は軽視されがちなところがありますが、時間が無駄にかかる、ポロポロ失点する、大幅減点の危険という事態を避けるためにも、頻出論点の要件、論拠はしっかり把握して、論述をしっかりできるようにしておきましょう。
時間が無駄にかかれば、50点とれるはずのところが設問1つがほとんど書けずに40点になり、ポロポロ失点すれば40点取れるはずのところが35点になり、要件を1つ落としたら35点取れるはずのところが30点になる。そんな恐ろしい結末となってしまいます。