底辺司法試験浪人生の泥沼脱出記

司法試験受験という泥沼に陥りもがきながらも平成28年度合格を目指す人間の生き様を記したブログ。幾多もの失敗経験から学んだこと、考えついたことを書いていきます。司法試験受験生や他の難関試験受験生等にとって少しでも参考になれば幸いです。

H24民法で書くべきこと

 先日、同士と素晴らしい先生と開いたゼミで平成24年司法試験民法の問題を取り扱ったので、大事なことを忘れないために簡単なメモを残しておきます。今後もゼミで扱ったことは取り上げていくつもり。

 詳しい解説は辰巳とかの予備校を参考とすべきですし、受験生にどれだけ有益なメモとなるかは不明なので、受験生の方は過度の期待は抱かないでください!

 

第1 設問1(1)

 売買契約による所有権の主張が認められるかという問題。2分の1についてはEに持ち分があり、Fは甲土地2分の1の持ち分の範囲でしか所有権を主張できないのではないかが問題となる。

1.問題点の指摘 

 Fは、①Bの甲土地もと所有、②AB間の売買契約締結、③A死亡、④FはAの子であることを主張して、AB売買と相続により、甲土地の所有権が自己に帰属することを確認する請求をすることが考えられる。

 ②~④は争いなし。①については甲土地がC死亡に伴いDE間で共有となるため、Dは2分の1しか持ち分を有しておらず、BはそのDから持ち分2分の1を相続により承継したのであるから、持ち分2分の1の範囲でしか①が認められないのではないか。

2.Eの持ち分2分の1について

 Fは持ち分2分の1については甲土地の所有権を取得するが、Eの持ち分であるはずの部分についてまで所有権を取得するか。

 Dの子Bは、Eに無断で甲土地全部を売却しており、2分の1については他人物売買(560条)に当たり、Eから持ち分2分の1を取得してAに移転しなければならない。しかし、Bは遺産分割協議(909条)や共有物分割(256条)等の手続きをしておらず、Eから持ち分を取得できていないため、Aには甲土地の2分の1しか所有権が移転できていない。

 Fは、甲土地のうちDが有していた持ち分2分の1についてのみ所有権が認められる。

3.Fが甲土地全部について登記を得た場合

 Fが、Eの持ち分2分の1についても登記を得れば、Eに対して所有権を取得したと対抗できないか。

 Fは無権利である以上、Eは登記なしに所有権を対抗できるため、Fが登記を得たとしても、甲土地のうちDが有していた持ち分2分の1についてのみしか所有権は認められない。

※時間の都合上、3は短めに書くべきではないかと思われる。触れなくても大して痛手ではないかも。

 

第2 設問1(2)

 売買契約締結事実が、長期取得時効を主張する場合にどのような法律上の意義を有するかの問題。どの要件が問題となるか、暫定真実等の規定との関係はどうなるかなどを書くべき。

1.要件

 長期取得時効(162条1項)が成立するには、①自己所有の意思があること、②平穏かつ公然と占有がされたこと、③20年間占有されたこと、④他人の物が占有されたこと、⑤時効を援用したこと(145条)が必要となる。

2.所有の意思との関係

 所有の意思は外形的客観的に定められるが、売買契約において買主になるということは、客観的に見て所有の意思があるとみるのが通常である。

 したがって、186条1項の推定を覆す抗弁に対する積極否認として法律上の意義を有する。

3.他人の物との関係

 162条1項の文言が他人の物になっているのは通常自己の物を時効取得することは考えにくいからにすぎないので、時効制度の趣旨である物の占有継続という事実状態を権利関係に高めること及び立証の困難性の救済は自己の物にも当てはまるため、自己の物であっても時効取得が可能である。

 自己の物でも時効取得が可能である以上、他人の物との要件との関係では法律上の意義を有しない。

 

第3 設問2

 複数人が寄託した物を混合保管していたところ、保管物の一部が滅失したというケース。物の全部の返還請求が認められるかという問題。契約の合理的解釈から合理的な結論を導き出さないといけない。

1.請求の根拠

 契約書6条に基づく全部返還請求。6条は、同一数量を返還するとの規定であるため、全部請求が認められるとも考えられる。

2.半分の返還しか認められない論拠

 混合保管の趣旨(契約書4条)より、個々の所有権は失われ、寄託者は、寄託物全体について割合に応じた共有持分権を取得する。6条は共有持分割合に応じた数量の返還を認めたものと解すべきである。

 寄託者の公平の観点より、Fが有する2分の1の持ち分を一方的に奪ってしまうべきではないし、滅失があった場合に6条がそのまま適用されて先に返還請求した者が優先的に返還が受けられると解すべきでない。

 Gは2分の1しか返還を受けられないとしても、残りについては金銭賠償を求めることができるし、酷な結論とならない。

 寄託数の割合に応じた返還しか認められないと解すべき。

※正直かなり難しい問題。いまだにどういう論拠を提示するのが説得的かわからない。設問1と3は確実に稼ぎやすい問題なので、そちらの完成度を高めるべき。

 

第4 設問3

1.債務不履行の成否

 債務不履行(415条)が成立するには、①債務者が本旨に従った履行をしないこと、②損害発生、③帰責事由、④因果関係が必要である。

 無償の寄託に合意し引き渡しがあるため、Hは寄託物について自己の物と同一の注意義務を負う。

 しかし、Hは、鍵をかけ忘れるという自己物を保管する場合であってもありえないほどの重大な注意義務違反をしており、無償寄託に基づく保管義務という寄託上の債務を怠ったといえる(①を満たす)。

 Hの重大な注意義務違反(③を満たす)により、盗難が発生し下線部の事態が生じたといえる(④を満たす)。

 したがって、損害があるといえれば、Hは債務不履行責任を負う。

2.賠償の範囲について

 債務不履行による損害賠償の損害に含まれるのは、通常損害(416条1項)と当事者にとって予測可能な特別事情に基づく損害(416条2項)である。

 損害が生じると分かっていたのにあえて債務不履行をした以上、生じた損害を賠償させるのも酷ではないという考えで2項が規定されたことからすると、債務者が債務不履行時に損害発生が予測可能であれば、債務者は賠償責任を負う。

 本件では、Q百貨店全店舗での取り扱いが今すぐには認められないことになってしまうことは予見できても、交渉打ち切りという強固な手段をQ百貨店がとり将来にわたって取り扱いが認められなくなることまでは予見できなかった。

 したがって、損害賠償請求は認められない。

 

 

 設問2は難しいですし、この手のじっくり現場で考えさせる問題を本番の限られた時間内でうまく書くのは至難の業ですね。

 比較的点数が取りやすそうな設問1、3で確実に点をとり、設問2でいかに食らいつくかが大事だったと思います。

 去年も解いた問題ですが、答案の出来は結構上がっていると実感(まだまだ全然物足りないけども)。過去問を何度も問題を解くよりは、初見で予備校の問題を解くほうが良いかもしれませんが(時間配分をしっかりする練習になる、時間内にしっかり書ききる練習になるため)、たまには過去問に再び当たるのもよいでしょう。

司法試験に備えていつ仕事をやめるべきなのか

 以前、司法試験受験生がフルタイムで働くことは狂気の沙汰だと書きましたが、生活していくには働くしかないという方も少なくないでしょうし、バイトを軽くやるだけで生活していけるとしても世間体や将来の不安を考えるとやはり仕事はやめにくいという方も少なくないでしょう(私も今年の順位的に最後まで司法試験に合格できないおそれが高く後者に当てはまっています。)。

lotuses.hatenablog.com

 できる限り仕事は続けざるを得ないとして、仕事を辞めるとしたらどのタイミングか、どういった条件が揃ったら辞めるべきなのかについて考えてみました。

 

○タイミングについて

・10月ぐらいで辞める

 合格発表が終わり、受験生がそろそろ本気を出しはじめ、予備校がそろそろ答練等を始める時期に辞めるということがまず考えられます。

 試験まで半年~7か月ほどあるので、試験対策ができる期間の長さはそれなりにあります。半年であれば燃え尽きることなく何とか本番までは持つでしょうし、合格可能性を上げることを考えればせめてこの時期ぐらいには辞めたほうが無難でしょう。

 個人的には、これぐらいのタイミングで辞めて、しっかり予備校の答練を受けるのが良いと思っています。

 

・1月ぐらいで辞める

 できる限り仕事を続けながらも、司法試験に合格したいという方は、もうちょっと引き延ばして1月ぐらいに辞めるというのも強く考えられるところです。

 試験まで4か月ほどしかないので、試験までに間に合わなくなるおそれが高いですが、今までに積み重ねが十分にある方であれば何とかなる可能性は低くないでしょう。

 年度末付近に忙しくなる業界が多いですし、本格的に仕事が忙しくなり勉強できなくなる前に辞めるというのも、受験生としてはおおいにありでしょう。

 

・4月に辞める

 せめて試験1か月前ぐらいの直前期にはしっかり勉強したいという方は、4月に辞めるということも考えられます。

 仕事の引き継ぎのことを考えるとちょうどよいタイミングでしょうし、司法試験にギリギリ間に合わせるにはこのタイミングしかないでしょう。

 司法試験はとてもとても1か月で何とかなる試験ではないので、司法試験においてかなりの積み重ねがなければお勧めできませんが、生活できないのあれば仕方がないでしょう。

 2か月無職orフリーターになる程度であれば、空白期間は短くて済むため経歴の点ではダメージを減らせますし、失業手当でやりくりすることで生活も何とかやっていけるでしょうし、本当に生活が大変な方はこうするしかないかもしれません。

 

・仕事を続ける、辞めない

 すでに安定した職に就いている方、合格可能性が著しく低い方は、司法試験合格の可能性が大幅に下がっても仕事を辞めないままでいることが強く考えられます。

 直前にがっつり勉強できないのは極めて大きなディスアドバンテージであり、実際社会人合格者は非常に少なく合格者もベテランがほとんどなわけですが、まともに再就職することが困難な現代社会においてはやむを得ない選択肢です。

 

 

○仕事を辞める条件、考慮要素について

・年収、福利厚生、待遇、社会的地位など

 大企業や公務員など安定した職に就いている方は、わざわざ生活が崩壊するリスクを冒してまで仕事を辞めるべきなのかよく考えたほうがよいでしょう。そもそも司法試験に合格する必要性がそれほどないでしょうし、リスクを冒してまで司法試験人生を賭けない方がよいでしょう。

 一方で、中小企業で辞めてもそこまで痛くないという方は、司法試験に合格することを強く考えるべきですし、ボーナスが出てからすぐ辞めるといった思い切った決断をしてもよいでしょう。

 

・合格可能性、自信があるか

 司法試験に合格してしまえば、合格しないよりもはるかに将来の見通しがたちますし、合格できるのであれば仕事を辞めてしまっても大丈夫でしょう。

 そのため、模試や答練などで合格可能性が高いと判断したら、仕事を辞めるということが考えられます。

 

・生活が可能か、援助してもらえるか

 親や親せきに泣きつけるのであれば、泣きついて司法試験の勉強に専念した方が勉強時間が大幅に増えるため、司法試験の合格の可能性はぐっと上がるでしょう。

 司法試験に合格した後に存分に孝行をすればいいだけの話ですし、働かなくても何とか生活が可能であれば、仕事はやめてしまったほうが良いかもしれません。

 

・辞めても他に道があるか

 最終的に司法試験に合格できなかったとしても、自営業等で生活していけるのであれば、思い切って仕事を辞めるという決断をとりやすいです。専業主婦として生きられそうな方も同様でしょう。

 あと、年齢的にまだ公務員になる道が残っている方は、仕事を辞めたうえで司法試験の後に公務員試験も受けてしまうということが強く考えられます。

 

試験本番直前に見直すまとめについて

 今年も11月となり、平成28年度司法試験まであと半年ほどとなってしまいました。

 現段階ではまだ試験日やその直前にどういったものを見直すべきなのかについて深く考える必要はないでしょうが、試験日及びその直前に特に自分にとって重要な部分を見直すために、今のうちから試験日及びその直前に見直すためのまとめをぼちぼち用意しておきたいところです。

 そこで、今回は試験本番直前に見直すまとめについて適当に考えたことを書いてみたいと思います。

 

○まとめの必要性

・復習に使える時間は意外とない

 試験日や直前に何もかもじっくり復習できるのであればそれがベストでしょうが、実際にはそんなに広い範囲をじっくりと復習する時間的体力的余裕はないです。極度の緊張のせいで予想以上に体力を消耗するので、どうしてもじっくり復習できる範囲は限られてしまいます(広範囲を復習しようとすると広く浅くしか確認できないぞ!)。

 やみくもに復習するよりは、特に自分が間違えやすいところ、記憶があやふやになりやすいところ、上手く文章化しにくいところなどを重点的に復習したほうがよいでしょう。

 

・荷物が邪魔になる

 実家や下宿先から試験会場にすぐ行ける方はそれほど気にしなくてよいでしょうが、試験会場から遠い方やホテルに宿泊するという方は、荷物が多すぎるとはっきり言って邪魔です。

 移動程度で体力を奪われても仕方がないですし、あれもこれもと欲張って勉強しようと思うと焦ってどこも深く復習できないなんて事態になりかねないので、ある程度持っていくものを絞っておいたほうが無難だと思います。いろいろと持っていけば精神的な支えにはなりますが。

 

 

○どういったまとめを使うべきか

・まとめノートを作るべき?

 本格的にまとめノートを作ろうとすると手間がかかり、無駄に時間を使ってしまうおそれが強くなるので、自分にとって特に重要な個所をA4の紙で数ページ~十数ページにまとめたり、既存のテキストや論証集を自分用にアレンジして使ったりするのがよいと思います。

 

・百選や教科書は?

 百選や教科書などは普段の学習には有用ですが、試験に必要なことがうまくまとまっていない、理論をどう答案上で表現すればよいかがわかりにくいなどの理由から、直前での見直しにはあまり有益でないでしょう。学者が書いた問題集なんかもほぼ同様のことが言えるでしょう(中には直前の見直しに適しているものもあるでしょうが。)。

 

・問題集や答案を持っていくのは?

 試験に必要な事項がまとまっている予備校の解説付き問題集は、分量が多く自分が直前に見直さなくてもよいところも多く含んでいるという点でデメリットはありますが、直前での見直しには適しているでしょう。1日目2日目では問題集をしっかり読み込むことが難しいでしょうが、3日目の刑法や刑事訴訟法についてはある程度可能なので、刑事系だけ問題集を持っていくというのもありかもしれません。

 自分がどう書くか、どういった構成だと書きやすいのかが自分の答案を見ればよくわかるので、自分の答案を直前に見直すというのもありだと思います。試験会場では電子機器を利用できないのが厄介ですが、PDF化したものをiPadなんかに入れておくとよいかもしれません。

 

○まとめの量

 私の勝手な印象ですが、あれもこれもといろんな本を旅行用のキャリーケースいっぱいに入れて行った人よりは(私のことだ)、これと決めたものだけ持って行った人が合格している気がします。あと、本番でいろんな個所をこれでもかというぐらい見直している人よりは(これも私のことだ)、これと思ったところを絞って復習している人が合格している気がします。

 勉強が進んでいるからこそ本番直前で復習しなければいけないところが少なく、本番復習に見直さないと怖い箇所が少ないのでしょうが、自分の苦手なところをしっかり認識してそこを重点的に復習するというのは試験で点を取るために非常に有用なのではないかと思います。

  あと、直前で見直さないといけないところを減らす努力を常日頃からしておくことが大事なんでしょうね。

改めてテキストや教科書を読む効用について

 司法試験の世界では、ちょっと前に7回読み勉強法が話題になりましたが、今回は改めてテキストや教科書を読む効用について語ってみたいと思います。

 

 テキストを繰り返し読んで基本的事項の理解を深め徹底的に復習することの効用は昔から強く言われていたことですが、教科書をしっかり読み込むことの効用が強く言われるようになったのは新司法試験になってからですし(遥か昔のことは知らないので、半世紀前の予備校もほぼない時代には言われていたかもしれませんが)、効果はある程度あるにしても実際どれだけ効果があるのか、他に良い方法があるのではないかはいまいちよくわからないところです。

 世の中には、教科書はほとんどいらない派の方も結構いますし、テキスト読み込むよりも徹底的にアウトプットしたほうがええんや派の方もかなりの数いるわけですが、「勉強がある程度進んでからも改めてテキストや教科書を読んだほうがよいのではないか」という話をしたいと思います。

 

○メリット

・基本的事項の復習になる、理解が深まる

 司法試験では答案練習などのアウトプットが非常に重要と言われていますし、実際その通りですが、アウトプットを適切にするにはインプットをしっかりしておかないといけませんし、答練→復習→答練→以下、ループという過程を踏まずに、ただ書くだけの練習をしても学習効果は薄くなってしまうため、徹底的な復習は必須となります。

 予備校のテキストはわかりやすく話をまとめてくれているので、記憶の整理には非常に役立ちますし、定期的に見直せば記憶を定着させるのに非常に役立ちます。部分部分を読むのもよいですが、通読すれば体系的な理解が深まると思います。

 教科書の方は、試験に出ないようなことも書いていますし、試験対策という観点からは直接使いにくいところも多いものの、学者が何十年もかけて研究した成果が表れていることもあって、理解を深めるのには役立ちます。教科書ばかり読んでいても教科書の内容を司法試験でうまく答案化するのは難しいため、予備校の力に頼らず合格までたどり着くのは難しいでしょうが、理解を深めるという点では役に立つのでたまには読んだほうが良いと思います。

 

・論述をより正確に書きやすくなる、応用がききやすくなる

 長い間勉強していると、判例がだいたい何を言っていたか、どういう説をとっていたかはわかるでしょうが、「だいたい」の理解で「だいたい」の論述しかできないよりは、より正確な理解で正確な論述をするほうが良いに決まっています(だいたいしか書けないと簡単に30点台が取れるぞ!)。

 何度もテキストや教科書を読めば、それだけ判例の文言をしっかり読み込む回数が増えるため、判例が用いている文言の意義を正確に理解し、答案に表現しやすくなります。

 論証集も有用ですが、テキストや教科書を読めば、なぜそのような論証になるのかや、事例のあてはめをどうするかといったことがわかりやすいですし、一つの判例や一つの規範を覚えるにしても、その判例や規範に関する知識や理解が深ければ、司法試験で求められる応用がききやすくなるのではないかと思います。

 

・あやふやな部分を減らせる

 いくら勉強していてもいまいちよくわかっていない部分は出てきますし、今まではよくわかっていたけどしばらくやっていなかった結果わからなくなってしまった部分も出ています。

 テキストや教科書はやや細かいところや、あまり試験には出ない(けども勉強が不十分なまま出るとまずい)ところまで関われているので、網羅的な勉強には適していますし、知識や理解があやふやなところをカバーしやすいというメリットがあります。

 どうしても答練ばかりの勉強となると、マイナー論点が手つかずになりやすいですし、しばらく書いていないところがあやふやになりがちなんですよね。

 

 

○デメリット

・時間がかかる

 やはりしっかりテキストや教科書を読もうと思うと、時間がかかります。

 とはいえ、何度も読み込んでいると、どこに何が書いてあるかはだいたい覚えているでしょうし、自分が何度やっても忘れてしまうところもわかるはずなので、かつてよりは読み込むのに時間がかからないと思います。

 

・あまり出ないところまで読んでしまい、コスパが悪い

 確かに、答練や過去問を解いたり研究したりすることに比べると、テキストや教科書を読むことは、出題可能性があまり高くないところまで勉強してしまうため、コスパが悪くなるという危惧があります。

 しかし、学習歴が長い方であれば、どういった論点が司法試験に出やすいかはわかっているでしょうし、テキスト等を何度も読んでいくうちにどこが出やすいからしっかり復習しないといけないかは把握できていると思います。本当に全く司法試験に出ないところや関係ないところは飛ばせばいいですし、出題可能性の低い部分は流して読むなどの工夫をすればよいだけなので、コスパの悪さはそれほど心配しなくてよいのではないかと思います。

 

・学説に深入りしすぎてしまう

 学説に深入りしすぎるのは司法試験に受からなくなる典型的パターンのようですし、教科書ベースの勉強をしすぎるとそのパターンに陥る危険は高まります。

 とはいえ、あらかじめ過去問にしっかりあたっておき市販の問題集をしっかり解いておけば、これは司法試験では知らなくてもよい学説である・こういう学説があるということだけ知っておけばよい・この学説はテキストで要点だけ抑えとけばよいといった判断ができると思うので、学説に深入りしてしまい迷走する事態は避けられるでしょう。

 問題も解かずに教科書ばかり読むと司法試験と関係ないところで深みにはまってしまうおそれがありますが、ある程度勉強してきた人であればそういうおそれはあまりないと思います。

 

 

 改めてテキストや教科書を読むことは、基本的知識・理解の復習、理解の深まり、しばらくやっていなかった分野の見直しに良いですし、答練だけではカバーしにくい網羅的な復習や体系的理解の深まりを期待できるので、たまにはテキストや教科書をしっかり読んでみてもよいと思います。

 勉強がある程度進んだ方であれば、どこが重要か(重要でないところは流すか飛ばす)、自分がわかっていないのはどこか(わかっているところは流すか飛ばす)がはっきり把握しているはずです。また、昔のようにいろんなところでやたら詰まったり、まるで理解できずに時間だけが過ぎるという事態は少なくて済むでしょうし、コストパフォーマンスは悪くないでしょう。

放火罪の「焼損」の意義をどう書くか

 放火罪は論文での出題の可能性は低めですが、短答ではよく出ますし、どう書くか人によって割れやすい「焼損」の意義について、私がどう書くか簡単に整理しておきます。

 

・学説

 独立燃焼説(判例):火が媒体物から離れて目的物に燃え移り、目的物が独立に燃焼を継続する状態に達したこと。放火罪は公共危険罪なので、延焼の危険性が高まる目的物の独立燃焼時を基準として、既遂時期を考えるべきとの考えからきている。

 燃え上がり説:主要部分が燃焼したこと

 一部損壊説:目的物が毀棄罪の損壊の程度に達したこと

 効用喪失説:目的物の燃焼により本来の効用を喪失したこと

→どの説も優秀な先生が考えていることもあって、それなりに根拠がありますが、論文で書くなら独立燃焼説が無難で書きやすいでしょう。

 燃え上がり説は主要部分がどこかが不明確で判断が困難、一部損壊説と効用喪失説は目的物の財産性を重視しすぎていて公共危険が生じるかとの観点から離れているという問題があります。

 

・不燃物建造物の場合

 独立燃焼説:燃えないので既遂にはならない。

 効用喪失説:燃えなくても、火力により建造物の効用が失われれば既遂。

 毀棄罪修正説:焼損するのと同様の公共の危険を生じさせる場合は既遂。

→シンプルな結論になるため、書きやすいのは圧倒的に独立燃焼説。

 「焼損」の国語的意味からして、目的物が燃えていないのに「焼損」というのは難しいでしょう。

 

 ちゃんと論拠を書いてうまく説明できればどの説をとってもよいわけですが、書きやすさのことを考えると独立燃焼説が一番無難かなと思っています。他の説だと判例が採っている独立燃焼説を批判しないといけませんし(時間と手間がかかる)、公共危険罪を毀棄罪のように効用が失われたか否かの観点からとらえるのはなぜかを説明するのは難しいと思います。

 放火罪は去年のLECのセミファイナルだったかでも出てきましたが、そこで無理して効用喪失説で書いたら全く点にならなかった苦い記憶が蘇る…

 

 あと、放火罪といえば、建造物の一体性(物理的一体性、機能的一体性)、公共の危険の認識の要否の論点ぐらいはしっかり書けるようにしておきたいところですね。ここら辺の論証ぐらいはしっかり吐き出せるようにならないと。いちいち基本的な論証で思い出すのに時間をかけていたら30点台どころか30点を取ってしまう。

刑法で司法試験に出なさそうなマイナー分野

 刑法を勉強していてふと「放火罪とか文書偽造罪とか賄賂罪なんかは論文でも出題される可能性はあるだろうけど、一体どこまでマイナーな分野が出るんだろう?」とどうでもいいことを考えたので、私以外の方が同じようなことを考えて時間を無駄にしないためにも、考察結果を書いてみます。

 

・まずは公式発表の確認

 司法試験の刑法の出題範囲は、「刑法に関する分野の科目」なので、刑法はどの条文が出されても文句は言えない。過去問を見る限り、特別法や条例は問われることがまずないと言っていいはず。

 

・論文は勿論、短答でもたぶん聞かれない

 内乱に関する罪、外患に関する罪、国交に関する罪:判例がないし、この分野を主に研究している学者もほとんどいないはず。地下鉄サリン事件内乱罪を適用すべきではないかという話はありましたし、最近ではイスラム国絡みの事件で私戦予備罪の捜査がありましたが、司法試験とはまず縁がない分野。

 出水及び水利に関する罪、:現実にまず適用されているケースがないので、司法試験でも聞かれることはまずないはず。

 あへん煙に関する罪:特別法で処理されますし、司法試験にも縁がないはず。

 印象偽造の罪:文書偽造の方はよくあることですし、司法試験でもそこそこ出ていますが、こちらはさすがにマイナーすぎるでしょう。

 礼拝所及び墳墓に関する罪:死体損壊ぐらいは論文でちょろっと書くことがあるかもしれませんが、出るとしてもそれぐらいでしょう。

 重婚罪、富くじ販売罪:賭博罪は出ても、ここらへんまではマイナーすぎるので出さないでしょう。

 

・論文ではたぶん出ない

 管轄:短答では出ても、論文でメインに出題されることはたぶんないはず。メインで出題するとなったらどんな問題になるのか想像がつかない。

 往来を妨害する罪:割と論点はあるので、短答なら出る可能性はあるものの、一般的にも無名な罪ですし、論文で出題されることはさすがにないでしょう。

 

 略取罪とかでも出題されますし、可能性は低くても全くでないとは言い切れない分野がそれなりにあります。なので、論文ではたぶん出ないは少なめにしておきました。

 短答ですら出ないに分類したものは、本当にマイナーな分野ばかりなので、まず出ないでしょうし、仮に出てもみんな知らないので問題ないと思います。

司法試験受験生がフルタイムで働くということ

 法科大学院進学者が大幅に減り、予備校も予備試験経由での司法試験合格を熱心に謳い出している今日この頃。平成27年度から新たに募集停止となり、今年度の法科大学院全体の入学定員はピーク時の約半分まで落ち込んでいます。

27年度「法科大学院」受験者数、初の“1万人割れ” ! | 旺文社教育情報センター

 ロースクールがこんな状態ということもあり、受験業界では予備試験からの司法試験合格をやけに宣伝するようになってきました。特に最近は「社会人でも予備試験から司法試験合格!」みたいな広告や記事を目にする機会も増えてきました。

 

 しかし、実際には東大とか一橋レベルの有名大学でも、勉強時間が比較的少ない純粋未修者の合格率はそれほど芳しくないですし、かなりの実力があると思われる予備試験合格者ですら、有職者となると学生や無職・フリーターの人と比べると合格率がだいぶ見劣りします(面倒なのでデータの引用はしない手抜きっぷり)

 有名大学以外の既修者の合格率を見てもわかりますが、大学から地道に勉強してきた学習歴の長い人でも合格は至難の業というのが現状です。

 勉強時間だけ増やせば受かるというわけではもちろんありませんが、かなりの勉強時間が必要ということは間違いないですし、とにかく少しでも多くの勉強時間を確保しておきたいところです。

 

 ですが、フルタイムで働く場合、最低でも7時間45分ほどは仕事で拘束されてしまいます。また、いくらホワイトな企業でも日に1時間~2時間程度の残業がざらにあるところが多いでしょう。

 仮に残業ほぼなしだったとしても、体力・気力を回復する時間、通勤時間、他の従業員との交流に使う時間などはどうしてもかかってしまいます。その一方で、勉強する時間はどんどん削られていきます。それこそブログなんて書いている時間なんてないのです!

 いくら、通勤時間にしっかり参考書を読む、仕事中も手が空いたら頭の中で論証を確認する、仕事を気合いで定時に終わらせる等の涙ぐましい努力をしたところで、1日に8時間時間を奪われてしまうのは、専業受験生とも競争しないといけないことを考えると、あまりに大きなハンデと言わざるを得ません。 

 また、マルクスか誰だっかが「労働で失った体力や気力などを回復するために休みがある」と言っていましたが、フルタイムで働く受験生は、その休みべき時間を勉強という体力・気力を消耗する行為に充てるわけです。マルクス(か誰だったか)もびっくりの狂気の沙汰といえるでしょう。

 

 冷静に考えて、最低でも8時間ほど勉強時間が削られる、労働で失われた体力・気力を回復しなければならなくなることを考えると、働きながらでもしっかり勉強をこなせる非常に優れた体力と気力があり、勉強時間が少なくても済むだけの非常に優れた素質・適性・集中力・記憶力がある(又は今まで勉強してきた蓄えがある)人でないと、フルタイムで働きながら合格するのは難しいというのが私の意見です。

 私の周りを見ても、いろんな合格者に聞いても、ネットでの情報を見ても、ガチガチに働きながら合格した人はほぼ皆無ですしね。社会人受験生も多い予備試験の合格者も内訳をみると、社会人は1割ほどしかいないですし、相当厳しい道のりなのは間違いないです。